九星学院一不思議


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「あ、あの〜。一体何をするつもり?」
 薄暗い部屋の中、土波景はおずおずと尋ねた。
 夏休みまっさかりの八月十五日、彼は電話で呼び出され、真夜中の学校に
やって来ていた。
 幼さの残る丸顔に、大きな黒い瞳。襟を少し過ぎた辺りでざっと刈られた黒い髪、
同じ色のジャケット、ズボンは暗闇に埋没し、額から後ろ頭に巻かれた白い鉢巻だけが、
ぽんやりと自己主張する。
 そんな出で立ちの少年は、不安げに揺れる瞳で自分を呼び出した張本人を見詰めていた。

 気の強そうな目に、実際気の強い性格。巻き毛の金髪を後ろ頭の上の方で一つにくくり、
暖色のゆったりとした服に身を包んだ少女。
 ……それが、土波が普段見ている一つ年上の先輩、金波輪だった。
 今だって彼女は、いつもと同じ髪型・服装でいる。
 彼等が通う国立九星学院は私服校なのだが、彼等は――生徒会役員である彼等は、
巨大な校内にいてもすぐに目撃情報が得られるよう常に同じ形状の着衣を身に付けるよう
義務付けられている。
 といっても、他の生徒たちがいない今日までそうしているのは、規則というより習慣化
している証拠かも知れない。
 居心地が悪そうに身を疎めている会計の一年生に、二年生の副会長は無言のまま、くす りと笑ってみせた。

 部屋が薄暗い所以――その部屋唯一の光源である七本の蝋燭の火に
下から照らし上げられている彼女の顔は正直言って――

 かなり怖い。
 こんな時間にわざわざ呼び出され、一体何が起こるのか、土波には
皆目見当がつかなかった。
 未知への恐怖に自然心拍数が上がり――
「黙ってないで、とっとと始めろ」
 突如、二人とは別の声が響いた。



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