翌朝――
もう雨は上がり、明るい日差しがさしこんでいた。
ちゅん、ちゅく、と鳥の声。
そんな中、私は部屋で大の字になって寝転んでいた。
別に本当に眠っているわけじゃないよ。物事を考える時はこの体勢にかぎるのだ。
物事――特に奇抜なアイデアを思いつくのには。
「今回は道長に惨敗しちゃったな〜。あーあ。
道長の驚いた顔、一度見てみたいなぁ……」
な〜んてぶつぶつ言いながら、足をぱたぱた。
十七歳には思えない行動だって?
だからぁ、奇抜なイタズラを思いつくには童心になるのが一番なんだって。
「――そうだ」
はた、と気がつき、むくり、と上体を起こす。
「道長の持ってきた木くずが本物だとは限んないよね。うん」
一人で言ってうなずくと、
蔵人[くろうど]――天皇の側に仕える雑事担当の役人――を呼んだ。
「――というわけでね、この木くずが本物かどうか確かめてきてほしいんだよ」
「高御座[たかみくら]の南側の柱、でしたね」
その蔵人は木くずを受け取りながら、
「天皇は疑り深いですね。道長殿が嘘をつくとは思えませんよ」
蔵人はさわやかな笑顔を浮かべて言う。
「……まぁ、念のためだよ」
「私は道長殿を信じていますよ。あの人は本当にたいした方です」
「……」
蔵人木波[きなみ]が部屋を出て行ったあと、私は彼を呼んだ。
「海波、いるか?」
「おう! ここにいるぜ」
「念のためだ。木波の後をつけて不正を働かないか見てきてくれ」
「りょーかいっ!――ったく、お前今回は人選ミスが多くねぇか?
肝試しの時は道長がライバル視してて絶対弱味見せたがらない梅野をくっつけるし
――いや、それはくじで決めたんだっけか。
今は今で道長ファンで有名な木波を確認役にしちまうなんて……」
「分かってる。反省してるよ。
……だから、早く行ってくれ。頼む」
「わーったよ。じゃなー」
一人になると、
大きな大きなため息をついた。
結局、道長水波に一切の不正はなかった。
「適材適所」の言葉を胸に、私は新たな作戦を練り始めるのであった。
< 肝試し 〜花山君の大作戦〜 : 完 >
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