前身サイトの二万ヒット企画でリクエストいただきました、
「ム○ゴロウさん並に動物に愛されまくるコンラッド」です。

ルッテン村の動物王国

 1 、2 3 はギャグで 4 5 はヴォルフ乱入でちょいシリアス。
続編は、魔族三兄弟ネタのような、ウェラー父子ネタのような・・・

※「ルッテン村」は、幸せ☆ ルッテン計画というお遊び企画に端を発する
 当サイトのオリジナル設定です。
 「原作やアニメからいってこれは変だろ――っ!」と思われる部分もあるかと思いますが、
 気にせず読み飛ばしてやってください・・・。

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るってん・むら【ルッテン村】《名》
 眞魔国の一領地である、ルッテンベルクの別称。農業の発展をはかる
ルッテンベルクに住む混血のものたちが、農作物の販売促進のためにとった
苦肉の策。

るってんべるく【ルッテンベルク】《地名》
 眞魔国の一領地。もともとは国の直轄地であったが、
現上王フォンシュピッツヴェーグ卿ツェツィーリエ陛下が、在任中に
流れ者の人間に与えてしまった土地。
 その後、その人間が、国外から混血のものたちを連れ込み住まわせた。
その人間亡きあとも、混血のものたちが住み続け、現在にいたる。
 肥沃な土地を利用し、農作物の生産をさかんに行なっているが、あやしげなものも
含まれているため、この土地の作物が良識ある眞魔国民の食卓にのぼることはない。

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 ……なんて、陰口のようなことが書かれた辞書が眞魔国に
出回っているとも知らず、ユーリは「ルッテン村」にやってきた。


             *


「ここがコンラッドの地元か〜。のどかでいいところだね」
 ちょっと小高い丘の上。
 馬上から眼下に広がる小さな家や田畑の風景を見て、
ユーリは正直な感想を口にした。
「ありがとうございます。ユーリ」
 地元をほめられた礼をのべ、その土地の領主は微笑んだ。


             *


 ふとしたできごとから、コンラッドの地元が一大農業地域であり、
彼自身、領主(またの名を村長)として地元の農作業を助けていると知ったユーリは、
彼の領主魂に感動し、自分も何か手助けがしたいと主張した。
 そうして企画されたのが、「ユーリ陛下の一日村長」である。

 ユーリは今日、その企画を実行するために「ルッテン村」を訪れた。
 ルッテン村の実情を知らず、自分がどれほどの影響力を持っているのかにも
無自覚気味な双黒の魔王は、自分の行動がほんのちょっとでも
いつも世話になっている名付け親の、そして彼の地元の助けになればと思っていた。

 彼の行為が、その後のルッテンベルクの状況にどれほどの影響を
もたらしたかなど――今の、そしてのちの彼も知ることはない。


 ユーリがルッテン村で知ったのは、コンラッドが村長として人々に慕われていることと、
彼が「人々」以外にも慕われまくっていることだった。


             *


 丘を降りた魔王陛下一行――ユーリ、コンラッドと、護衛の兵が数名。
ギュンターはいつものごとく留守番役となり、いつもならどうやっても
ついてきそうなヴォルフラムは血盟城を留守にしていた――は、
ルッテン村の入り口で大々的な歓迎をうけた。

「いらっしゃいませ、ユーリ陛下ー」
「おかえりなさい、コンラッド村長〜」
 横断幕をかかげた住民――村人たちが、村の入り口に集まって
魔王一行に歓迎の声をなげかける。
「あれ? 今日はユーリ陛下が村長だっけ?」
「えーと、まだ就任式してないから村長が村長じゃないか?」
「まいっか。いらっしゃいませ、陛下ー。おかえりなさい、村長ー」
 ……ときには、そんな雑談もまじる。
「きゃーっ! ユーリ陛下――っ!!!!!」
「村長の話どおり、なんてステキな方なの〜っv」
「陛下――っ! 村長ーっ!」
 と、女性陣の甲高い声はこんなかんじ。

 どーも、どーも〜、と頭をさげ(ヴォルフがいたら、もっと堂々とするよう
注意されたに違いない)、ユーリは馬を降りた。
 と、人々の間から、弾丸のように何かが飛び出すのに気づいた。
 何だ!?
 ということを判断できる間もなく、それはユーリとおなじく馬を降りたばかりの
コンラッドに衝突して――
 コンラッドがしゃがみ、きちんと受け止めたことで、それが
犬であることにようやく気づいた。

 鼻の突き出た顔と、ぴっと立った三角の耳。四本の足としっぽの先、
それから胸の部分の毛は白く、コンラッドが「ただいま、リィイラ」と言いながら
なでている背中には、茶色とこげ茶の混じった長いふさふさの毛。
 地球でいうところの、コリーやシェルティのような造形だ。

 リィイラというらしい茶色いワンコは、ちぎれんばかりにしっぽをふりふり、
コンラッドの顔をなめまわしていた。
 おおはしゃぎのお出迎えに、コンラッドは「ちょっとは落ち着けよ」と話しかけながら、
困ったような、けれど、やっぱりうれしいというような複雑な表情。

「す、すみません、村長! こらリィイラっ!」
 村民の輪の中から、今度は中年のおじさんが走り出してきた。
 その人がリィイラの飼い主だと思ったのだが――リィイラは、主人の言葉に
従うことなく、コンラッドにじゃれつき続けていた。
「あああ、もう……って、はっ!」
 コンラッドとリィイラのほうに駆け寄ったおじさんは、「はっ!」と
自分で言って、ばっとユーリの方に振り返り頭を下げた。

「も、申し訳ございません、陛下! うちのバカ娘がせっかくのお出迎えを……」
「いや、いいって、いいって。子供は元気なのがなによりだよ。うんうん」
「リィイラ」はやっぱ女の子の名前なんだなー、なんてことを思いつつ、
ユーリは恐縮しきるおじさんに明るく対応。
「そう言っていただけると……いや、本当に申し訳ありません。
 いつもはききわけがいいやつなんですが、村長が帰ってくると聞くと
とたんに落ち着きをなくしちまうんです」
「へー。飼い主でもないのにそんなになつかれてるなんてすごいじゃん、コンラッド」
 おじさんにあいづちをうったあと、ユーリはコンラッドの方に声をかけた。

 感激の再会は、ちょうど終わりを告げたようだ。
 リィイラをおとなしくさせた(けど、しっぽはゆれたままだ)コンラッドは、
顔をふきながら立ち上がる。
「まだ子犬だったこいつが、ケガをしているのを見つけて
手当てしたのが俺なんです。
 城に連れて行っては窮屈だろうと思ってここに預けたんですが……」
 足にすりよる茶色い頭に、いとおしげなまなざしをむけ、
「久しぶりにここに来て、こうやって出迎えてもらえたときは
本当にうれしかったな」
 そのときだけでなく今もそうなのだと、その表情は語っていた。
「そっか」
 見ているユーリまで心があたたまる。

「子犬のころからってことは、もう何年くらいになるの?」
「そうですねぇ……ヴォルフが生まれるちょっと前だから……」

「ヴォっ!?」

 って、ことは、82年以上前っ!?
 ざっと80年ですね。というか、それこそヴォルフの年と同じくらい(笑
 なんてコンラッドの言葉を聞きながら、ユーリは脳内の「眞魔国の事情」ページに
こう書き込んだ。

 眞魔国では、やっぱり動物も長生きだ。

 と。

つづく。
 なぜ「コリーやシェルティのような造形」にしたかといえば、
管理人が飼ってた犬がシェルティ(シェットランド・シープドック)だったから、というだけ。
今でも人が散歩させてるの見たり、テレビで見たりするとトキメいてしまう、シェルティ・・・。
 耳がぴっと立った横顔が大好きだ―――――っ!!!!!
(と思っていたら、シェルティって、耳の先たれてるのが一般的らしい・・・)

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