漫画「最悪な夢」オマケ小説
 このお話は、
  マンガ「最悪な夢」(全6ページ)の続編です。
  先にそちらを読んでから、続けて読むことをおすすめいたします。

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理由

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 ――そうじゃない。

 船酔いの激しい嘔吐感のなか、
ぼくは声に出せない反論を繰り返していた。

「けど、やっぱ兄弟だよな〜」

 うなされていたユーリをぼくが心配していたときとは反対に、
今は、狭い簡易ベッドに突っ伏したぼくに、
ユーリが穏やかな口調で語りかけてくる。

「前――スヴェレラ行ったときだったかな。
 コ……ンラッドさ、」

 苦しそうにつまってまで、ユーリはあいつの名前を言った。

「自分より先におれとグウェンが分かりあったみたいで
悔しい、なんて言ってたんだぜ。
 勘違いもいいとこだよな〜。お前ら兄弟って、こんなに信頼しあってんのに」

 ――ぼくは、奴を信じたわけじゃない。

 ユーリの顔は、うつぶしたぼくには見えない。
でも、想像はつく。

「ちゃんと、はやく事情わかって戻ってきてくれるといいよな」

 ――そう思ってるのはぼくじゃない。



 ユーリ、お前自身だろ!?



          ***



 ユーリ。ぼくがあんなことを言ったのは、ぼくがあいつを
信じてるからなんかじゃない。



 ユーリにつらい顔をさせたくなかったからだ!



 ぼくがそばにいるのに……



 どうしてそんな顔をするんだ!?

 ぼくじゃ不満なのか!?

 あいつじゃないとだめなのか!?


 そう叫んで問い詰めたかったくらいだった。



 ……ユーリ。

 お前は、――そんなこと、絶対にぼくはしないけれど――もし、
もし、ぼくがシマロンの服を着たら、同じように
つらい顔をしてくれるのか?


『あたりまえじゃないか、ヴォルフラム』


 答えたのは、ユーリとは別の声だった。


『!?』

『そんなことになったら、ユーリはもっと悲しむかもしれないぞ』

 てきとうなことを言って、奴は微笑む。
 白と黄色の軍服をまとって。

『黙れ!』

 ぼくはそいつに、いつの間にか手にしていた剣をつきつけた。

『ユーリを苦しめている張本人が知ったような口をきくな!』

 闘技場で、ユーリが言っていたセリフを繰り返す。

『そんな服はとっとと脱いで戻って来い!
 これ以上ユーリを苦しめるなら、ぼくは絶対にお前を許さない!』

 動じる様子もなく、白刃の先でそいつはぼくに問いかける。

『……理由はそれだけ?』

『他に何があるというんだ!』

 ぼくが叫ぶと――

 そいつは、なにもかも見透かしたような笑みを浮かべて、
消えた。


 ――理由なんて、他にあるものか。


 ぼくは、ユーリとは違う。
 ユーリが思っているような、兄思いの弟なんかでもない。

 ぼくが思っているのは、ユーリだけだ!


『勝手に都合のいい勘違いをするなっ!! ――――っ!!』



          ***



「……ン、ラート……」

「ヴォルフラム……」

 吐き気を訴えて横になったまま眠ってしまったヴォルフの寝言を聞き、
ユーリはその手を握った。

「なんだよ、んな顔して寝んなよな。
 今は、おれがそばにいてやるからさ」

End.

 このオマケ小説を作ろうと思った理由はただ一つ!

 ヴォルフラムがユーリに、
「コンラートはお前に剣を向けてない」と言ったのは、
「コンラッドを信じていたから」ではなく、
「ユーリを元気づけたかったから」! と言いたかったから。

 だったん、だけどなぁ・・・。

「二人ともコンラッドがいなくてさびしい」感じになってしまいました(汗)。
 いや、実際、ヴォルフラムはそうだろうなーと思ったから
 そういう話になってしまったわけですが。

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