ページ4 翌日の朝、火波はいつものように六時に起き、いつものように トレーニングをこなしてから、朝食をとりに寮から食堂へ向かおうとしていた。 さすがの彼もあくびをかみ殺す。 昨日は――いや、正確には今日になるのだが、五時まで部屋のテレビに 見入ってしまっていた。睡眠というより仮眠をとったにすぎない。 時がたてぱたつほどニュースの伝える情報は増えていった。 ビルにその時どれだけの人がいたかということ。 逃げ出した人のこと。その中で行方不明になった入のこと。 ビルにつっこんだのがハイジャックされた旅客機だったこと。 事件が起きたのがツインタワーだけではなかったこと。 それらを思い出し火波の表情は暗くなった。 一時闇の仮眠の後、自分は夢を見ていたのではとテレビをつける。 現地の生映像はまだ続いていた。 ――暗くなってるだけじゃなんにもならないって。とりあえず朝食! 火波は胸の内でつぶやいて寮の部屋を出た。 食堂にはほとんど人がいなかった。 今日は日曜日なのだ。わざわざ朝早く起きてご飯を食べる人は少ない。 それでも部活などのために早起きを強いられた生徒も皆無ではないのだが…… 広過ぎる九星学院の食堂はやけに寒々として見えた。 そんな数少ない利用客の雑談が耳に飛ぴ込む。 「昨日のニュース……」 「見た、見た! あれって……」 ほとんどの話題がそれだ。 食堂には映画館のような大型スクリーンが設置されているのだが、その画面でも、 他の話題で会話をするなと言うかの如く事件のニュースが流れ続けていた。 当然だよな、と思いながら顔なじみの食堂のおばさんの方へ向かっていると、 後ろから声をかけられた。 「火波さん。ちょっと、いい?」 火波は二人分注文することにした。 見上げてくる土波の顔は、病人のように憔悴しきっていた。 |
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