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 数分後――
 決勝戦はついにクライマックスを迎えた。
 九星と新鮮が同時にリーチをかけた。
 最後の問題。どちらが早いか、そして正当できるのか――

 生徒会室の何人かは、完全に出場者と同化して緊張し、こくりとつばを
のみこんだ。
 司会者が問題を読み上げる。
 早押しボタンが押されランプが点灯。
 当たれば優勝、外せば減点、その一瞬に――


「番組の途中ですが臨時ニュースをお知らせします」
『え――――――っ!?』
 絶妙なタイミングで現れたスーツ姿のアナウンサーは、
全国で上がっているであろう不満の声どこ吹く風で原稿を読み上げにかかった。

 水波は顔を上げた。クイズの時はずっと下を向いていたのだが、
臨時ニュースとなればほうっておけない。情報は武器であり、
価値のあるものなのだから。

 普通にテレビ画面を見て問題に答えるより、「書類を処理しながら正答していく」
方が格が高いと思ってやっていただけだし。

「先ほど、午後十時ごろ、世界有数の高層ビル、ツインタワーの一本に
ジェット機が衝突しました」
 映像が切り替わり、灰色の空のバックに白いビルが二本、並んで立った。
 その一本のかなり上部から、黒い煙がもうもうと上がっていた。
よく見ると、赤いものもちらちらと姿をのぞかせている。

「うわ――……、映画みたいだな、これ……」
 現実味がわかず、呆然とした声の一年。
「中の人たち、大丈夫かな……」
 安否を気づかう、心配そうな声の土波。
「このビルって、たしか五千人くらい働いてるって聞きましたよ。上の方は
たぶん――でも、それより下の階の人は大丈夫じゃないですか?」
 事実を見、冷静な声で答える木波。
「大丈夫って、上の方だけでもかなり人数が……」

 テレビの画面から、低い音がし始めた。
 みんな一斉に画面に向き直る。
 そびえ立つ二つの突起に向かって新たな影が接近していた。
「うそっ!?」
「おい、あれも――」

 ぶつかる!

 おおかたの期待を裏切り(というのもまずいか)、影はビルの後ろを通り過ぎた。
 誰かがほっと息をつく。
 が、次の瞬闇――
 すさまじい轟音とともに画面がゆれた。

 ゆれる画面の中、二本目のビルが赤い粉をはきだした。
 まるで、赤い風船がいっきにふくらみ破裂したような光景。
 風船の中には白い粉や水が入っていたりすることがあるが、
巨大な赤い風船から吹き出したのは、黒い霧だった。

 ビルの後ろをすりぬけた――そう見えた影が急転回し、まだ無事であった方の
ビルの横っ腹につっこんだのだ。
 一本目より、いくらか低い位置に。

 それこそ映画か何かと見まごう光景だった。
 現実にそんなことが起こるとは、誰が思っていただろう。
 まあ……起こした張本人には分かっていたことだろうが、
こんなことをしようと考え出す人間はまず正気じゃないなと水波は思った。





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