第1話 放課後の校庭7
 ふぅあ……

 土波は、あくびとともに目をさました。
 いつもの習慣で目をこしこし。
 ……あれっ? ここってどこだっけ……?

「やっと目を覚ましたか」
 わけが分からずぼけーっとしていると、横から声がかかった。
 って、この声は……
「水波さん!?」

 ふとんをはがして上体をおこすと、予想したとおりの人物がそこにいた。
 介護者用の椅子に足を組んで座り、片腕で頬杖をついてこちらを眺めている。

「どうしてここに……? いや、水波さんがじゃなくて俺も……???」
 ここが保健室であることにはなんとか気づいた。
 水波の後ろには大きな窓。そこから第三グラウンドが見える。体育の授業で
擦り傷をつくり、何度か簡単な治療をしてもらいに来たことがあった。

「廊下でオレにぶつかったんだよ。正確にはオレのノートパソコンに、だけどな」
「えっ……?」
「ったく、廊下を全力疾走、しかも前を見ずに。被害者のはずのオレが
加害者のお前をここまでつれてきて、ついでに治療……。いい迷惑だぜ」
「ご、ごめんなさいっ!」

「さらに言うと、今までお前につきっきりで五時間目と六時間目がさぼりになった」
「え、えぇっ!? ほ、本当にごめんなさいっ!……って、今はもう放課後ってこと?」
「ああ」
 こともなくうなずく水波。
 そういえば、窓からさしこむ太陽が低い。

「あ、あの……つきっきりでいてくれたって、保健室の先生は……?」
「さーな。急患か出張か最初からいなかったぜ。それで勝手にお前をそこに寝かせて、」
 土波の額を指差し、
「そうやっといたんだよ」
「あっ……」

 何かおかしいと思ったのだ。
 土波の額には、いつもの白いはちまきではなく、アイスノンがバンドでまきつけてあった。
「こぶができてたからな」
「うそっ!? うわー。馬鹿やったー……」

 ていっ

「いったーっ! 何、人のこぶつついてんだよ!」
「いや……なんとなく……どんな反応示すかなーって……」
 涙目で訴える土波に、自分でも何をしたかったのかよく分からないという表情の
水波であった。


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