ふぅあ…… 土波は、あくびとともに目をさました。 いつもの習慣で目をこしこし。 ……あれっ? ここってどこだっけ……? 「やっと目を覚ましたか」 わけが分からずぼけーっとしていると、横から声がかかった。 って、この声は…… 「水波さん!?」 ふとんをはがして上体をおこすと、予想したとおりの人物がそこにいた。 介護者用の椅子に足を組んで座り、片腕で頬杖をついてこちらを眺めている。 「どうしてここに……? いや、水波さんがじゃなくて俺も……???」 ここが保健室であることにはなんとか気づいた。 水波の後ろには大きな窓。そこから第三グラウンドが見える。体育の授業で 擦り傷をつくり、何度か簡単な治療をしてもらいに来たことがあった。 「廊下でオレにぶつかったんだよ。正確にはオレのノートパソコンに、だけどな」 「えっ……?」 「ったく、廊下を全力疾走、しかも前を見ずに。被害者のはずのオレが 加害者のお前をここまでつれてきて、ついでに治療……。いい迷惑だぜ」 「ご、ごめんなさいっ!」 「さらに言うと、今までお前につきっきりで五時間目と六時間目がさぼりになった」 「え、えぇっ!? ほ、本当にごめんなさいっ!……って、今はもう放課後ってこと?」 「ああ」 こともなくうなずく水波。 そういえば、窓からさしこむ太陽が低い。 「あ、あの……つきっきりでいてくれたって、保健室の先生は……?」 「さーな。急患か出張か最初からいなかったぜ。それで勝手にお前をそこに寝かせて、」 土波の額を指差し、 「そうやっといたんだよ」 「あっ……」 何かおかしいと思ったのだ。 土波の額には、いつもの白いはちまきではなく、アイスノンがバンドでまきつけてあった。 「こぶができてたからな」 「うそっ!? うわー。馬鹿やったー……」 ていっ 「いったーっ! 何、人のこぶつついてんだよ!」 「いや……なんとなく……どんな反応示すかなーって……」 涙目で訴える土波に、自分でも何をしたかったのかよく分からないという表情の 水波であった。 |