廊下の左右に好奇の視線。 黄色い悲鳴や、甘いため息。 水波はその真ん中を、かまわず ずんずん歩いていく。 まわりからそんな視線で見られることには慣れている。 たとえ、今見つめられるのが彼一人の容姿のためではなく、 土波を抱きかかえているからなのだと分かっていても。 「水波様すてきー」 「本当、王子さまみたーい……」 「じゃぁ、土波くんはお姫さま?」 「やんっ! かわいい――――っ!」 かわいい、ねぇ……? まわりからこぼれる黄色い声に耳をたてていた水波は、 土波の顔をちらりとぬすみ見た。 まだ幼さの残る丸い顔。今はとじられているが、ひらけばぱっちりとした黒瞳。 小さく息をつく唇。眉は太い方だが、それなりにかわいいと言えなくないことも…… ……。 何を考えてるんだオレは!? 水波があわてて首を振ったのは、もう保健室の前だった。 |