第1話 放課後の校庭6
 廊下の左右に好奇の視線。
 黄色い悲鳴や、甘いため息。
 水波はその真ん中を、かまわず ずんずん歩いていく。

 まわりからそんな視線で見られることには慣れている。
 たとえ、今見つめられるのが彼一人の容姿のためではなく、
土波を抱きかかえているからなのだと分かっていても。

「水波様すてきー」
「本当、王子さまみたーい……」
「じゃぁ、土波くんはお姫さま?」
「やんっ! かわいい――――っ!」

 かわいい、ねぇ……?
 まわりからこぼれる黄色い声に耳をたてていた水波は、
土波の顔をちらりとぬすみ見た。

 まだ幼さの残る丸い顔。今はとじられているが、ひらけばぱっちりとした黒瞳。
小さく息をつく唇。眉は太い方だが、それなりにかわいいと言えなくないことも……

 ……。

 何を考えてるんだオレは!?

 水波があわてて首を振ったのは、もう保健室の前だった。


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