「真野。ちょっと待て!」 「わわっ!? わ……わざわざ追ってきたんですか? 瞬間移動まで使って」 いきなり目の前に現れたかきのに本気で驚いた真野だったが、 すぐに平静を取り戻した。 「お前に聞きたいことがある」 「なんですか、やぶからぼうに……」 真野はそっぽを向いて言った。 男同士が見つめ合って熱く語り合ったりするのが、この場面にふさわしくないことは 確かである(この場面に限らない気もするし……)。 「梨野を戻す方法を教えろ!」 「知るかそんなの」 …………………… 真野のあっけない即答に、沈黙が訪れた。 「……お前もしかして、ホンッキで戻す方法知らなくて、小さくなった梨野 さらって、そのまま育てるつもりだったのか?」 「そうですねぇ……、今の梨野さんが6歳で、今の私が19。梨野さんが もとの17歳になるには11年かかるわけですから、私は30代突入…… そんなの嫌ですよ」 「じゃあ、なんで……」 「方法は知らないと言いましたが、絶対戻らないと言った覚えはありませんよ」 「……?」 「私が梨野さんを小さくしたのは、私を兄と思ってくれていた方が、 連れ出しやすいと思ったからです。 早ければ明日、遅くても1週間で梨野さんはもとの17歳に戻ります」 ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ 「――だそうだ」 梨野家に帰ったかきのは、先に戻っていた梅野たちに、真野の言っていたことを 話した。 「なーんだ。じゃ、安心じゃないの」 「あっさり言うけどさー……その戻るまでの間、お前に梨野、預かってもらうぜ」 明るく言う緑野に、かきのはため息を交えて言った。 「ええっ!? ちょ、ちょっと待ってよ! うち両親がいるのよ! 無理に決まってるじゃない」 「それはそれ、隠し子だとかいろいろごまかし方は……」 「それ、ごまかしにならないと思うぞ」 慌てる緑野に、つっこむ梅野。 かきのは再びため息をつく。 「小さくなってる梨野の面倒、オレにみろって言うのかよ? 小さくっても 梨野は梨野なんだし……」 「魔が差すかもしれない、ってことか?」 「はっきり言うな!」 梅野の言葉に、かきのは顔を赤くして怒鳴る(図星らしい)。 「……梨野、一人で大丈夫だよ」 「へっ?」 だんまりを決め込んで、ことのなりゆきを眺めていた梨野がぽつりと呟いた。 |