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「んなこと」

 ゆらり。

 かきのが立ち上がった。
 象の麻酔を打ったと明言していた梅野と、それを聞いていた緑野の二人が目を見張る。

「できるわけないだろ――――――っ!」

 ご――――――――――――っ   ジュワツ!

「なっ――」
 叫んだかきのの体から、妙な色をした煙が吹き出した。
「なに! なにが起きたの!?」
「……間違いないな」
「間違いないって、だからなにが!?」
 焦った声を上げる緑野とは対照的に、梅野は淡々と述べる。
しかし彼も、ほほをつたる冷たい汗は抑えきれていなかった。

「――さすがかきのだ。麻酔を汗として体外に放出している」
「そ、そーなの?」
「ああ。さすが俺が(実験台として!)見込んだだけのことはある」
 嫌な見込まれ方である。

 あ、だから、この二人が親友になったのは、梅野が「見込む」前の事だから、本当!
「梨野を幸せにできるのはオレだけだっ!」
 言い訳を無視して(誰が誰に?)かきのが叫んだ。

「オレは 梨野の幸せのために 、ずえったい、身なんか引かないからなっ!」

 かきののはっきり、きっぱり、自信満々の断言っぷりに、梅野と緑野の
心の声がハモった。

『すんげー自信家……』

「つーわけで、梨野の男はオレがたおーっすっ!」
 言ってかきのは再ぴ駆け出した。
 がらがらぴしゃん、と教室のドアが開き、閉まる。
 梅野と緑野は……

 はっ!

 ようやく我に帰ったところだった。
「まずいな。早く捕まえて誤解をとかないと……」
「学校に血の雨が振るわよっ!」




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