ふらふら…… ぺたっ きゅっきゅっ じゃー…… 数分後、生徒会室を出た土波は、なんとか近くの手洗い場までたどりつくと、 水をめいっぱい出して口をゆすぎ始めた。 な、何だったんださっきのは!? 天波先輩はどういうつもりなんだ!? こ、これってまさか、男色ってやつ!? それとも、俺って本当に女の子みたいなのか――――っ!? ぐるぐる回る思考のサーキット。 ちょうどそこへ、一人の女子生徒がやって来て土波に声をかけた。 「つっちー、何してるのー?」 「!?」 彼のクラスメート、久星〔くぼし〕アクミだった。 「な、何よ、そのびっくりした目は……」 彼女はいつもと違う土波の様子をすぐに察したようだった。 「何? 気分でも悪いの?」 心配そうにきいてくる。 うん……すっごい最悪な気分……。 「ねぇ、何かあったの?」 それが人に言えるような内容ならいいんだけどね……。 無言のままでいる彼を見て、久星はあごに手をやり、 「ははーん、さては……」 彼女おきまりの冗談を言うときのポーズ。 「口をゆすいでたわよね。ってことは、」 ってことは? 「誰かにキスでもされたんでしょ!」 土波は、 脱兎のごとく逃げ出した。 「ちょ、ちょっと、つっちーー!? 本当、今日はどうしちゃったんだろ……」 廊下には、首をかしげる久星が一人、残された。 |