続・眞魔国のスイカ事情 ページ1
「さ、陛下。召し上ってください」
 そう言ってコンラッドは、ユーリの前に真っ青なスイカを差し出した。
 まだ完熟していない、「緑色の」スイカという意味ではない。
 それは正真正銘の青だった。
 夏の空より濃い青だった。
 本来なら、ユーリが好きなはずの……
 ああ、そーだ。種がシロなら最高だったかも〜。
 なんて現実逃避をはかっても仕方がない。
 先割れスプーンを手に持って、青い果肉と黒い種の「スイカ」を見、
その向こう側の名付け親を見る。
 ユーリのために、地球からわざわざスイカの種を持ってきてくれた名付け親は、
優しい笑顔でスイカの皿を前にしたユーリを見守っている。

 この名付け親に、「こんな『スイカ』食えるか――っ!」と怒鳴って
スイカの乗ったテーブルを下から持ち上げひっくり返すことができるだろうか?

 否! できるはずがないっ!!
 テーブルがそもそも重すぎて、とても持ち上がりそうにないから……
 じゃなくて、純粋に名付け親の期待を裏切ることがユーリにはできそうにない。

 えーい、悩む必要なんてないはずだ!
 そうだ。通りがかったヨザックが、このスイカを見て言っていたではないか。
 今年もいい色だ、と。
 眞魔国のスイカは、青い色であることが当たり前なのだっ!
 この青いスイカを、眞魔国では誰もが食べているに違いないっ!!
 なにを恐れることがあるっ!
 地球にだって、黄色いスイカはあるんだぞっ!
 赤、青、黄、信号の色がそろっただけではないかっ。
 あんま関係ないかもしれないけど。

「よ、よしっ」

 ユーリは小声で呟くと、手にした先割れスプーンを、青い果肉の中へと
進攻させた。

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