「さ、陛下。召し上ってください」 そう言ってコンラッドは、ユーリの前に真っ青なスイカを差し出した。 まだ完熟していない、「緑色の」スイカという意味ではない。 それは正真正銘の青だった。 夏の空より濃い青だった。 本来なら、ユーリが好きなはずの…… ああ、そーだ。種がシロなら最高だったかも〜。 なんて現実逃避をはかっても仕方がない。 先割れスプーンを手に持って、青い果肉と黒い種の「スイカ」を見、 その向こう側の名付け親を見る。 ユーリのために、地球からわざわざスイカの種を持ってきてくれた名付け親は、 優しい笑顔でスイカの皿を前にしたユーリを見守っている。 この名付け親に、「こんな『スイカ』食えるか――っ!」と怒鳴って スイカの乗ったテーブルを下から持ち上げひっくり返すことができるだろうか? 否! できるはずがないっ!! テーブルがそもそも重すぎて、とても持ち上がりそうにないから…… じゃなくて、純粋に名付け親の期待を裏切ることがユーリにはできそうにない。 えーい、悩む必要なんてないはずだ! そうだ。通りがかったヨザックが、このスイカを見て言っていたではないか。 今年もいい色だ、と。 眞魔国のスイカは、青い色であることが当たり前なのだっ! この青いスイカを、眞魔国では誰もが食べているに違いないっ!! なにを恐れることがあるっ! 地球にだって、黄色いスイカはあるんだぞっ! 赤、青、黄、信号の色がそろっただけではないかっ。 あんま関係ないかもしれないけど。 「よ、よしっ」 ユーリは小声で呟くと、手にした先割れスプーンを、青い果肉の中へと 進攻させた。 |